「虐待親」の弁護

最近,本ウェブサイトの記事を見て
「児童相談所に子どもを一時保護された」
「子どもが児童養護施設に入っているけれど、早期に引き取りたい」
という親御さんからのご相談を受けることが多くあります。

つまり、私はいわゆる「虐待親」の弁護をしているわけです。

このように書くと、皆様から、
「練馬・市民と子ども法律事務所」の弁護士が虐待親の弁護をするとは何事か、子どもの福祉をどのように考えているのか
などと、お叱りを受けないか心配ではあります。

そこで私が「虐待親」とされる方々の弁護を、どのような心がけで行っているか、以下でご説明したいと思います。
なお、本稿では内容を分かりやすくするために、あえて「虐待親」という言葉を使っています。
しかし、実際に当職にご相談にいらっしゃる方は、皆、子育てに必死に向かい合っている方たちばかりです。
本稿の記載は、当職にご相談された方々を貶める意図は全くございませんことを、念のため申し添えます。

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まず、一時保護とは、児童福祉法第33条に定められており、児童相談所長などが、子どもの安全を守る必要があるときに、児童相談所の施設などで一時的に預かることをいいます。
つまり、親などの保護者から子どもを引き離して,子どもを安全な場所で一時的に保護するのです。

一時保護期間中は、子どもに対しては身体検査や知能検査などが、親に対して子どもとの関わりに対して指導や助言などが行われます。
一時保護の期間は2か月を超えてはならないのが原則とされていますが、2か月では時間が足りず、2か月を超えて一時保護がなされることもよく見られます。

多くの親にとって、子どもの一時保護は、ある日突然に起こります。

このこと自体は、一時保護がされることを察知した親が、子供を連れてこっそりと転居するなどのリスクを回避するために、やむを得ないものであると言えるでしょう。

しかし、親としては、子どもが突然児童相談所に一時保護されれば、大きな打撃を受けます。
これは人の親として当然のことであり、これを否定する人はいないでしょう。
また、子どもが一時保護されると、多くの場合、しばらく子どもと会うことすらできなくなります。
このため、親は不安からパニックになってしまうこともあります。
また、これまでの子育てを否定された気持ちになって追い詰められ、児童相談所に対して不信感を抱くことも珍しくありません。
逆に、子どもを人質に取られているような気持ちになり、言い方は悪いですが、全て児童相談所の言いなりになってしまう親もいます。

当職の私見ではありますが、子どもの一時保護が長期化したり、一時保護が解除されずに、子どもが児童養護施設などへ入所する背景には、親と児童相談所との間のコミュニケーションが十分でないことが原因である場合が、それなりに多いのではないかという印象を持っています。

他方で子どもにとっても,多くの場合、一時保護中は学校に行けなかったり,自由に外出ができなかったりと,これまでの社会とのかかわりを断ち切られ,また、不自由の大きな生活を余儀なくされます。

一時保護が長引くことは,子どもにとっても良いことではありません。
家庭の環境が整い,子どもに対する虐待のおそれがなくなった場合,子どもはすぐに親のもとに帰れるべきです。

本来であれば、子どもに対する愛情も養育能力も十分に回復できるはずの親が、前述のように、児童相談所に対して不信感を抱き、児童相談所とのコミュニケーションが取れなくなったばかりに、子どもが家に帰れなくなってしまうのは、最大の不幸でしかありません。

また、子どもが18歳まで児童養護施設で過ごせば,それでその子の問題は解決するわけでもありません。
子どもが成長しても、その人生は続いていく以上、真の問題解決のためには、家族の修復は不可欠です。

私は親側の弁護士として、児童相談所からの指摘を親が納得し、また、親がこれまでの子育てを振り返り,今後、子どもにとって、より良い環境で子育てをするために何ができるのか,そのような気付きのきっかけになるような活動をしていきたいと思っています。

ひいては、それが児童虐待のない社会の実現に役立てるのではないかと信じて、私は日々、児童相談所を訪問しています。

以上

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