子どもが児童相談所に一時保護されました①

Aさん,Bさん夫婦の子どもである小学3年生のCくんが,学校からそのまま児童相談所に「一時保護」されたとして,Aさんは児童相談所から「一時保護決定通知書」を受け取りました。
Aさん,Bさんいずれも,児童相談所に保護されるのは子どもに対して暴力を振るうなどの虐待を行っていたような場合という程度の知識しかありません。
ふたりとも,Cくんに対して虐待を行っていた心当たりはなく,児童相談所の対応に不満を持っています。

一時保護とは何か

そもそも,児童相談所による一時保護とは何でしょうか。
児童相談所の一時保護については,児童福祉法第33条第1項に規定があり,「児童相談所長は,必要があると認めるときは」「児童に一時保護を加えさせ,又は適当なものに委託して,一時保護を加えさせることができる」とされています。
一時保護をすることができるのは児童相談所長であり,子どもの親などの親権者の同意は必要としていません。
したがって,児童相談所長は,親権者が嫌だと言っても,子どもを一時保護することができます。

また,一時保護について,「必要であると認めるとき」というのがどのような時であるかについては,一時保護の目的が「子どもの生命の安全の確保」であることからすると,「子どもの生命の安全が脅かされているとき」ということが第一ですが,生命の危機だけではなく,子どもの権利の尊重や自己実現にとって悪影響があると判断されるときには,一時保護が行われるべきと考えられています。

一時保護の目的は大きく分けて,
① 緊急保護
② 行動観察
③ 短期入所指導
に分けられます。

行動観察とは,「適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合」になされるもの,また,短期入所指導とは,「短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合」になされるものです。

ただし,これらの目的は重なることも多く,例えば,両親が失踪したとして,家に置き去りにされた子どもを保護することは,その生命の安全を確保するための緊急一時保護に当たりますが,その後,一時保護期間中に,その子どもの発達状況や生活習慣などを把握するために,行動観察を行うことも,よく見られることです。

一時保護された子どもは,一般的には児童相談所に併設されている一時保護所に入所します。しかし,施設の収容人数などの問題から,他に一時保護を委託することもあります。

子どもが一時保護されるまで

それでは,虐待の疑いの通報があった場合,子どもが一時保護されるまでは,どのような経過をたどるのでしょうか。
一般的な流れについてご説明します。

ア 通報
まずは,児童相談所に対して,ある子どもに対して虐待などの疑いがあるという内容の通報が入るところから始まります。
通報者は病院や学校,幼稚園や保育園,近所の住民など様々です。
虐待の疑いについての通報を受けた場合,児童相談所は「全件受理」を原則としているため,すべての通報について,何らかの対応を行います。
すなわち,たとえいたずらや嫌がらせなどで通報がされた場合でも,児童相談所は全て対応をしなくてはなりません。
これは逆にいえば,児童相談所に虐待の疑いで通報されたからといって,そのまま子どもが一時保護されるわけではないことも意味しています。

イ 調査
通報を受けた児童相談所は,実際に子どもが置かれている環境がどのようなものか調査を行います。
実際に子どもの様子を見るために,職員による家庭訪問などがされることもあります。
また,児童相談所による調査が子どもの保護者に明るみになった場合,保護者が子どもの居場所を隠したり,児童相談所に反発したりすることを避けるため,調査は保護者に知られないように,秘密裡に行われることもあります。
さらに,例外的ではありますが,家庭訪問等によっても子どもの安全が判明しないような場合には,裁判所の許可を得て,強制的に玄関のカギを開けて,子どもを保護する臨検・捜索がされることもあります。

ウ 一時保護
調査の結果,保護が必要と判断されれば,子どもは一時保護施設などに一時保護されます。

一時保護には保護者の同意は必要なく,また,たとえ児童相談所からの家庭訪問等に応じていたとしても,調査の全貌は保護者には分からないことが多いため,保護者にとっては,子どもが一時保護されることは,まさに青天のへきれきであることでしょう。
一時保護が児童相談所による子どもの連れ去り,などと悪しざまに言われることの背景には,このようなことが関係しています。

しかし,児童相談所は,やみくもに子どもを一時保護しているわけではなく,調査に基づいて,子どもの安全が脅かされていると判断した際に,はじめて子どもを保護しています。
お子様が一時保護されて,保護者の方は混乱されていると思いますが,お子様が「全く根拠がなく一時保護されたわけではないこと」は,ご理解の上,今後の行動をされるべきと考えます。

次のコラムでは,子どもが一時保護された後の流れや対応について,ご説明いたします。

以上

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