子どもが児童相談所に一時保護されました④

Aさん,Bさん夫婦の子どもである小学3年生のCくんが,学校からそのまま児童相談所に「一時保護」されました。

しかし,AさんたちにはCくんを虐待していたつもりはなく,なぜ一時保護されたのか全く心当たりはありません。

Aさんたちは,できるだけ早くCくんの一時保護を解除し,早く家族で暮らせるようにしたいと考えています。

児童相談所との面談・交渉

ほとんどの場合,一時保護を行う場合にはそれなりの根拠があり,全くの不当保護ということはありません。子どもが一時保護された後,たいていの場合,保護者と児童相談所との間で面談がなされますが,その際には,冷静に,児童相談所の持つ問題意識を理解し,対応していく必要があるといえます。

仮に児童相談所の持つ問題意識に心当たりがあり,子どものために家庭内での問題点を改善していこうと思われるのでしたら,児童相談所と協同して,前向きに子どもを迎える用意をするべきでしょう。

審判で争う場合

一時保護は児童相談所が保護者の同意を得ることなくできますが,その後,一時保護の期間を延長する場合や,一時保護の結果,児童養護施設などへの入所させるためには,保護者の同意が必要です。

この同意が得られない場合には,児童相談所が裁判所に対し,「保護者の同意に代わって,裁判所が承認する」というような内容の審判を申し立てます。保護者はこの審判手続きにおいて,意見を述べることが認められています。

その時に具体的にどのような意見を述べるべきでしょうか。

まずは,児童相談所の指摘する「虐待」が全くの事実無根である場合には,ひとつひとつの証拠や,児童相談所の主張のおかしな点を指摘していくべきでしょう。

他方で,例えば子どもの前で夫婦喧嘩をしてしまったとか,子どもを叱るときにカッとなって叩いてしまったとか,そういう経験をされた方もおられるかと思います。子どもをいくら愛情深く育てていたとしても,上記のようなことも「虐待」の一種であるとされています。

そのような事実を児童相談所から指摘されている場合には,今後はどのように夫婦関係を改善していくか,感情のコントロールを行っていくか,真摯に振り返り,反省し,改善を図っていくことを,裁判所に伝えてください。

ただし,審判で争う場合には,結果が出るまで2か月から半年程度はかかり,また,児童相談所からは「反省がみられない」として,その間の子どもとの面会が禁止される傾向があります。

したがって,審判で争うということは,子どもとしばらく会えなくなることと表裏一体であり,保護者の方にとっては,非常に悩ましい判断を強いられるものだと言えるでしょう。

一時保護の問題点

本来,子どもは親と暮らす権利を持っています。

それは,何よりも重要な子どもの権利であると考えています。
それにもかかわらず,一時保護により,子どもは親から引き離され,また学校への登校もできなくなります。一時保護は子どもの権利に対して,非常に強い制限をかけるものであると言えるでしょう。

しかし,一時保護には保護者の同意も、裁判所の許可も必要なく,児童相談所が独断でできてしまいます。また,一時保護された子どもは,原則として学校には通えず,家族との面会も自由にすることはできなくなります。
突然の一時保護によって,子どもは親や学校,友人とのつながりを一切絶たれることになるのです。

他方で刑事事件においては,被疑者を通常逮捕するために,裁判官が出す逮捕状が必要です。
罪を犯した疑いがある成人を逮捕するためには,裁判所の許可が必要で,何の罪もない子どもを一時保護するのに裁判所の許可を得る必要がないのは,いずれも対象となる人(被疑者と子ども)の権利を制限するものであるという効果からすると,アンバランスな印象があります。

児童虐待については,児童相談所に強い権限がないかのような報道がなされていることもありますが,もともと児童相談所が持っている権限は,非常に強く,また,近年の法改正では,さらに児童相談所の権限が強化される傾向にあります。

また,一時保護中は,司法の関与がなく,また,いわば子どもを人質に取られている状態であるため,子どもを早期に取り戻したいあまりに,「児相のいうとおり虐待を認めたほうがいい」という方向に気持ちが動きがちです。つまり,潜在的に冤罪が生まれやすい状況にあると言えます。

実際には殴っていないのに「殴った」などと発言するべきではありません。「殴った」という事実が独り歩きし,子どもの施設入所が認められてしまうなどの不利益が生じる恐れがあります。
しかし,「虐待を認めなければ面会はできない」などと考えて,事実と異なる虐待を認めてしまう保護者の方の心情は当然のことでしょう。このようなことを回避するためには,児童相談所との面談の際に,弁護士を同席させるなどの対応をとるべきでしょう。

また,弁護士の立場からすると,一時保護やその解除,施設入所の判断基準が,担当の児童福祉司によって,まちまちであるような印象があります。このため,「どのような条件が満たされれば一時保護が解除されるのか」という判断基準を,保護者の方がイメージしにくいことがあるように思われます。

児童相談所に期待すること

児童虐待は決して許されるものではありません。
また,子どもは,自分の状況や意見を外部に発する力,すなわち虐待からの助けを求める力に乏しいことが多く,子どもと親を引き離す一時保護が,子どもの心身を守る機能を果たしていることも事実でしょう。

また,児童相談所の職員の方々は,皆さん子どもの権利を守るために,強い使命感を持って活動されていることは間違いありません。

しかし,外部から見ると,児童相談所の運用はブラックボックスであり,児童相談所の正義感が暴走している印象をうけることすらあります。
近年,児童相談所に弁護士を配置する動きが高まっていることもあり,児童相談所には,子どもといういわば人質を取っている状態であることを自覚し,手続きの透明性や公平性を意識した運用を期待したいと思っております。

以上

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