子どものためという呪い

離婚など,子どもの問題がかかわるご相談の際に,「子どものため」という言葉をよく耳にします。

「子どものために離婚しない」
「子どものために離婚したい」
「別れた相手に会わせるのは子どものためにならない」

しかし,「子どものため」というのは,本当はどういう意味でしょうか。
本当に「子どものため」なのでしょうか。

親は子どもの福祉を最大限に尊重した行動をとるべきであり,それは「子どものため」と言い換えられるかもしれません。
つまり,「親は子どものために行動しなくてはならない」というひとつの行動規範となってしまっています。
そこで,「子どものため」と言ってしまえば,どのような行為も正当化できると捉えられているように思うこともあります。

「子どものため」はなく,本当は「自分のため」なのに,自分の決断や行動を正当化するために,子どもを利用していないでしょうか。

親が「子どものために離婚したくない」と思っているとしても,当の子どもは「早く離婚してほしい」と思っていることもあります。
そのような場合,「子どものため」は単なるポーズであり,「自分のため」に離婚しない理由が欲しいだけなのではないでしょうか。

子どもは自分の気持ちをうまく言葉にして伝えることができません。
子どもがまだ未就学児の場合などには,特にそうでしょう。
学齢期の子どもであっても,親に対する反発や,考えの幼さから,本心が分かりにくいこともあります。

そのような場合は,「子どものことを一番に理解しているのは私」「子どものことを一番考えているのは私」という思いが強くなりがちです。
しかし,その考え方は,「私は子どものことを考えて行動しているのだから,子どもは私の言うことを聞いていればいい」という,子どもの人格を無視した,いわば子どもの私物化につながりかねません。

しかし,子どもであっても,親とは別の人格を持った個人であることを,自覚するべきだと考えています。
親の考えと子どもの考えが違っていてもいいのです。
というより,別の人格である以上,思っていることが違っていることが当然なのです。

「子どものため」に何か行動を起こそうと思っている方は,まずはそれが本当に「子どものため」であるのか,落ち着いて考えてみてください。
「自分のため」と「子どものため」が違っていても良いと思います。
「自分のため」と「子どものため」が違っていることを自覚し,それでも「子どものため」にできることは何かを考えることが,本当の「子どものため」,そして「自分のため」に繋がるのだと思います。

「子どものため」は必ずしも「自分のため」より優先されるべきであるとも思いません。
「子どもは離婚してほしくないと言っているけれど,このまま結婚生活を続けていったら,いつか自分が死ぬか相手を殺すかしかない」というような場合にまで,結婚生活を続ける意味はないでしょう。

将来,「私は離婚したかったけど,あなたのために離婚しなかった。だから毎日辛かった」などと,自分の下した決断の責任を,子どもに負わせるようなことはしないで欲しいと思うのです。

あなたの人生ですから,どのような決断をしようと,あなたの自由です。
しかし,あなたの決断が子どもの人生を左右する以上,その判断の責任はあなた自身が取ってください。
子どもをあなたの決断を正当化する道具にしないでください。
あなたの決断を,子どものせいにしないでください。

子どものための人生ではなく,あなたのための人生を生きてください。

以上

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