学校で事故が起こった場合③

中学生のA君は,学校で友達のB君とふざけていて転倒し,骨折してしまいました。
さて,A君は誰に責任追及ができるでしょうか。前回は,B君を相手にする場合についてご説明しましたが、今回は、学校を相手にする場合についてご説明します。

① 学校を相手にする場合
A君は,学校側の指導に責任があったとして,学校に対して損害賠償を請求することができるでしょうか。

A君の怪我の原因が,学校の設備の不具合や,教師の不適切な指導にあるような場合には,学校側に損害賠償責任を追及できることがあります。

それでは,A君の場合,学校側に責任追及ができるでしょうか。学校側に責任追及ができる場合とは、具体的にはどのような場合を指すのでしょうか。

例えばA君のケガの原因が,B君と悪ふざけをしていたはずみで階段の手すりにぶつかり,手すりが壊れたために階段から落ちてけがをしたような場合,学校の設備に不具合があったものとして,国家賠償法2条により,学校側に責任追及をすることができる余地があるといえます。

しかし,中学生のA君とB君がふざけあっていてA君が転倒し,けがをしたような場合はどうでしょうか。これは学校の設備の不具合による怪我ではないので,国家賠償法2条の問題にはなりません。そこで、A君の怪我が、「教師の不適切な指導によって生じたものである」といえるかが問題となります。

中学生くらいの子どもの場合,完全に大人並みとは言えないかもしれませんが,物事の善悪や行為の危険性はきちんと判断できる年齢です。したがって,教師が子どもたちが学校にいる間,常に危険な行動をしないか監視する義務まであるとはいえないでしょう。

例えば休み時間に明らかに危険なプロレス技をかけてけがをしたような場合にまで,教師の指導に問題があったとして,責任追及をするのは難しいことがあるかもしれません。

なお,単に学校に責任追及をすると言っても,A君が公立中学校に通学している場合には,損害賠償を請求する相手は,国家賠償法により,学校ではなく,その学校を管理する自治体となります。つまり,A君が練馬区立○○中学校の生徒であった場合,裁判の相手になるのは○○中学校ではなく練馬区です。

他方で,A君が私立中学に通学している場合には,相手となるのは学校そのもの,つまり学校法人となります。

② 教師個人を相手にする場合
それでは,A君は学校の教師個人を相手に,損害賠償を請求することができるでしょうか。

設例の場合とは異なりますが,例えば教師による理不尽な体罰によってけがをした場合など,直接の加害者である教師個人に対する責任追及を検討することもあるかと思います。

この点,子どもが私立校に通学している場合には,民法の不法行為の原則に則り,教師に不法行為があったとして,教師個人に対して損害賠償が請求できます(民法709条)。

他方で子どもが公立校に通学している場合には,国家賠償法によって,その教師に代わって国または地方公共団体がその損害を賠償するとされており,公務員である教師個人に対する責任追及はできないのが原則です。ただし,学校事故のケースではありませんが,公務員の行為が非常に悪質である場合には,公務員本人の責任を認めた判例もあります。このことからすると,教師の行為が悪質な場合には,教師個人に対する責任追及もできる余地があると言えるでしょう。

とはいえ、子どもにとっては友達や学校を訴えるというのは、非常に精神的な負担が大きいものです。
学校で子どもがけがをした場合などに、どのような対応を取っていくかは、子どもの気持ちを尊重して決定するべき問題です。

以上

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