学校で事故が起こった場合④

中学生のA君は,学校で友達のBくんとふざけていたら転倒し,ケガをしてしまいました。治療費については,治療費はスポーツ振興センターからの災害給付金を受け取ることができました。また,B君に対して慰謝料などを請求できることも分かりました。それでは具体的にどのような費用を請求できるのでしょうか。

治療費

治療費はスポーツ振興センターからの災害給付金から受けることができますが,この支払いは,保険が適用される治療に限られます。したがって,自由診療分の治療を受けた場合には,治療費をB君側に対して請求できます。

しかし,自由診療の治療については,なぜ保険適用がされる治療ではなく、その治療が必要であったかについて,きちんと説明できる必要があるでしょう。

また,治療のための通院交通費や,医師の診断書作成のための診断書作成費用も請求することができます。

慰謝料

怪我による入通院が長引いた場合,入通院に対する慰謝料として,入通院慰謝料を請求することができます。

慰謝料は,あくまで入通院による精神的な苦痛を慰謝するものなので,入通院期間が長引けば長引くほど,高額になる傾向があります。精神的な負担を金額に換算するのはとても難しい問題ですが,交通事故や労災事件の場合には,入通院期間に応じた慰謝料の目安が実務上存在しています。学校事故の場合にも,交通事故などの場合に準じて,慰謝料が決定されることが一般的です。

また,残念ながら怪我によって後遺障害が出てしまった場合,後遺障害慰謝料を請求することができます。後遺障害による慰謝料についても,交通事故の場合に準じて,慰謝料が算定されることが多いでしょう。

なお,後遺障害については,主治医の先生から「これ以上治療しても症状は改善しない状態に至った」,すなわち症状が固定したとして診断書を作成してもらった後に,スポーツ振興センターに対して後遺障害の等級認定の申請を行います。スポーツ振興センターが被害者の後遺障害の程度を判断し,後遺障害の等級を決定します。

逸失利益

A君はB君側に対して,怪我がなければ得られたであろう利益(金銭)も,請求することができます。これを逸失利益(いっしつりえき)といいます。

A君に後遺障害が残った場合には,後遺障害がない場合と比べて,将来の労働能力が後遺障害の程度に応じて,一定割合,減少すると考えられています。

例えば,A君が怪我により片足の膝から下を切断しなくてはならなくなった場合で考えてみましょう。将来、A君は両足がある人と同じように肉体労働や立ち仕事を行うことは難しいと言えます。仮に,A君がデスクワーク中心の仕事を行うにしても,後遺障害によって,さまざまな不便があることは容易に想像できます。このため,結果としてA君が得られる賃金は,両足がある人と比べて少なくなると考えられます。

そこで,A君はB君側に対し,後遺障害があることによって得られなくなった賃金相当額を逸失利益として請求することができます。

ただし,現在中学生のA君が,将来どのような職業に就くかは,全く分かりません。したがって,逸失利益の計算は,賃金センサスを根拠に計算されることが一般的です。

また,後遺障害によって喪失した労働能力の割合は,交通事故の場合に準じることが一般的ですが,具体的な判断はケースバイケースになることが多いです。

過失相殺

本件は,A君とB君が校内でふざけていたということなので,A君の怪我には,A君自身の落ち度もあるかもしれません。このような場合,A君の落ち度とB君の落ち度の割合を出して,A君の落ち度の分を,A君の損害から相殺します。これを過失相殺といいます。

例えば,A君に生じた治療費や慰謝料などの損害が100万円,A君とB君の落ち度の割合が5対5であった場合,100万円にA君の落ち度の割合である50%をかけた50万円が,B君に請求できる損害となります。

以上

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