借地権の譲渡について
一般的に借地権はあまり高額で取引されないと言われていますが,都心部では土地の権利が複雑に入り組んでいることが多く,土地に借地権がついていることはほとんど当たり前のことであるため,借地権の取引も比較的活発に行われているようです。
それでは借地権の取引の際に,注意すべき点には何があるでしょうか。
地主との交渉
借地権を無断で譲渡することは,借地契約上,認められていないことがほとんどです。
というのも,借地人が誰であるか,すなわち地代がきちんと支払われるかどうかというのは,地主にとっては最も重要な点であるからです。
したがって,仮に借地権を地主に無断で譲渡した場合,地主との信頼関係を破壊したものとして,借地契約の解除事由になります。
このため,借地権を譲渡したい場合には,まずは地主の承諾を得なくてはなりません。
承諾料
地主からの承諾を得るのと引き換えに,承諾料の支払いがなされることが一般的です。
承諾料には特段法的な根拠があるものではありませんが,借地人が変更することにより,地主が被る不利益を金銭的に評価して,それを補てんする性質を持つと考えられています。
このため,理屈からいえば,借地人が変わっても,特段地主側に不利益がないことが明らかであれば,承諾料の支払いは必要ないと言えそうです。
しかし,承諾料の授受は慣行上,一般化されているため,借地権を譲渡する場合には,承諾料の支払いは不可欠と考えて良いでしょう。
承諾料の相場は一般に借地権価格の10%相当と言われています。
借地非訟
地主が借地権の譲渡を認めない場合,借地人は,裁判所に対して,地主の承諾に代わって,裁判所が借地権の譲渡を許可の裁判を求めることができます(借地借家法第19条1項)。
そして,借地権を譲渡することが相当と認められれば,裁判所は,地主の承諾に代わって,借地権の譲渡を認める許可を出すことになります。
具体的には,借地権を譲渡しても特段地主の不利益にならないのであれば,一定の承諾料の支払と引き換えに,借地権の譲渡が認められることが多いです。
なお,この手続は通常の訴訟手続きではなく,借地非訟事件と分類されているため,例えば,裁判所は当事者の主張立証に拘束されないなど,通常の訴訟手続とは異なる点も多くあります。
また,借地非訟事件では,裁判所は裁判の前に,鑑定委員会の意見を聞くこととされています(借地借家法第19条3項)。
すでに述べたとおり,借地非訟事件は,通常の訴訟とは異なり,裁判所は当事者の主張・立証に拘束されません。
このため,例えば借地権価格について,借地人や地主がことさら問題にしていない場合でも,裁判所では異なる判断がなされることもあることに注意が必要です。
とはいえ,借地非訟事件においても,当事者の主張は非常に重要な要素であることには違いありませんので,借地人としては,「借地人が変わっても,地主に特段不利益がないこと」すなわち,借地人が変わっても土地の用法や地代の支払いに問題がないことを主張・立証していくべきでしょう。
このため,借地権を譲渡したい相手が見つかったら,その人と協力して,譲渡先の資力や土地の使用方法に問題がないことを,積極的に主張していくことが大切です。
ただし,地主側が借地を買い取ると主張した場合(これを介入権といいます。借地借家法第19条3項)には,第三者に借地権を譲渡することより,地主が建物を買い取ることの方が優先されることに注意が必要です。